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  • 執筆者の写真JAKEHS EAST

図書館の蔵書整理に思う

(記事執筆=遠藤正承/神奈川県立高等学校非常勤講師)


居住地のT区立Y図書館より隣接区のA区立N図書館をよく利用する。韓国語図書がたくさん収められているし、T区立図書館より選書姿勢が優れていると思うからだ。


ところが改装や蔵書整理期間のたびの処分には驚かされる。今回は大胆だった。諸橋轍次『大漢和辞典』はじめ大阪外国語大学『朝鮮語大辞典』、『우리말큰사전』等々が根こそぎ撤去されたのだ。『ハングル@ホームステイ』、塚本勲『朝鮮語を考える』そして나도향『물레방아』も廃棄されてしまった。『日本国語大辞典』と『広辞苑』、『조선말대사전』はかろうじて残された。


10数年前にも『조선료리전집』全10巻が廃棄されたことがある。大きな図版で見やすいカラー写真豊富な本であった。この本には「농마」という語に関するささやかな思い出がある。私は語の意味が当初わからなかったからである。前後関係から「でんぷん」という意味であることは推測でき、『조선말대사전』(1992)でようやく確認できた(なお現在、インターネット版『표준국어대사전』に搭載されている)。


『조선말사전』(1962)に「록말」が搭載されているように、この語のもとの形は「록말」である。しかし『조선말대사전』「록말」を見ると「→농마」とあるのみである。おもしろいと思ったのは北の語なのに頭音法則が適用され、「롱마」ではなく「농마」と表記されていたことだ。北ではこの語に対してはもはや漢字語という意識がなくなっているからであろう。


図書館に保管スペースがなくなっていることは大いにわかる。しかし、デジタル時代とはいえ、印刷・出版された書籍は図書館でしか保存できない貴重な文化財だ。各地区の図書館に保管できないのなら、せめて区の中央図書館の書庫に収めてほしい、それもだめならデジタルファイルとして保存してほしいと勝手に思う。


『조선료리전집』廃棄に気づいたとき、私は図書館の主任に訊ねたが「そういう本ありましたか。わかりませんね」と一蹴されてしまった。寂しい足どりで図書館を後にした。ちなみに「大学図書館横断検索」をかけたところ、全巻所蔵している図書館は一つもない。


この文を書き終わったところで、わが家の書棚にある鎌田茂雄『朝鮮仏教史』は勤務校の廃棄本であることを思い出した。まさに蛇足であるが。

 

■遠藤先生の過去の記事

・韓国語の台風名(2018年9月11日)

https://jakehseast.wixsite.com/eastblog/blog/classreport002


■参考リンク

-高等学校韓国朝鮮語教育ネットワーク(JAKEHS)

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