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  • 執筆者の写真JAKEHS EAST

친구考

更新日:2019年8月18日

(記事執筆=遠藤正承/神奈川県立高等学校非常勤講師)

          

「친구」ということばにはある思い出がある。


 ソウル・光化門の教保文庫で本を購入したときのことである。書店を出たところでレシートと本を照らしあわせてみたところ、ある本が2冊分レジ打ちされていた。そこで再び書店のレジに戻り、別の店員にこのことを話したところ、その店員から「죄송합니다. 친구가 잘못했습니다.」とあやまられたのである。そのとき、「친구」という語は「友だち」という意味だと思いこんでいた私は違和感をもった。


 このことを韓国の知人に話したところ、「きっと同僚という意味でそう答えたのでしょう。そういう答えかたもあるかもしれません」とさほど違和感なくとらえていた。

 比較的距離が近いといわれる日本語と韓国語の間ではあるが、「친구=友だち」という意味でのみとらえられるほど単純ではない。


 金素雲『精解韓日辞典』(1972、高麗書林)には載っていなかったが、油谷幸利ほか『朝鮮語辞典』(1992、小学館)には「친구」について「2《(対等以下の人を》親しみを込めて呼ぶ語:君、やつ」という説明が載っている。


 さらに『延世韓国語辞典』(1998、斗山東亜)には「②(主に口語で)『年齢が似ている人や年下の人』を呼んだり指す」と、インターネット版『標準国語大辞典』には「年齢が似ていたり、年下の人を見下して親しみを込めて呼ぶ語」と載っているではないか。


 私にあやまった店員のわびことばは「申し訳ありません。うちのやつがまちがいまして」といった意味になるのであろう。またその店員は、誤ってレジ打ちした店員と同年齢か、年上になるという推測がなりたつ。


 ちょっとしたことをきっかけに、あれやこれやと考えてみるのはとてもおもしろい。

また、韓国語母語話者でない私は、どんなにわかりきった語であれ、辞書をひいてみるべきなのだと、あらためて自戒する。

 

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■参考リンク

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