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  • 執筆者の写真JAKEHS EAST

互いを知ること

更新日:2020年3月20日

(記事執筆=武井一先生/都立日比谷高等学校、他)

 

 2019年の7月に日韓文化交流基金で渡日韓国高校生に向けて講義をした。依頼されたテーマは日本側からみた日韓基本条約についてというものだったが、その前提として互いを知ることが大切という話をした。


 日韓双方の往来が盛んになり、互いの国を訪問した経験のある人も多くなった。互いの文化に関心を持つ人も多い。しかし、互いの国に知り合いのいる人は多くない。観光で楽しむだけだということだ。相手の考え方を、相手から直接聞く機会はほとんどないということだ。

 日韓は一見するととてもよく似ている。人の顔立ちもそうで、つい外国にいることを忘れてしまうほどだ。しかし考え方はかなり違う。韓国の神は「天(上)」との関係で語られる一方、日本の神は「周囲(水平)」との関係で語られる。発想も上下型(トップダウン形)の韓国に対して、日本は左右型(ボトルアップ型)になる。韓国は「正しいこと」を追究する傾向が強いが(当為主義)、日本は「決まり事」を重視する傾向が強い(機能主義)。何を重視するかの考え方が違うといえる。


 双方の国に知人がいれば、直接付き合いの中で相手の考え方に触れることが出来るし、尋ねることもできる。しかし、相手に知り合いがいなければ、相手国の情報は自国のメディアから得る事になる。だが、自国のメディアは自国の人を対象に情報を出すので、何か日韓で衝突が起きると、相手国はおかしいということになってしまう。相手国のマスメディアに触れても、発想のしかたが分からないから、なぜそう考えるか分からないということになる。それでも日本からは韓国のメディアに触れようと思ったら触れることが出来る。日本語版を持っているメディアも多いからだ。ところが韓国語版を持っている日本のメディアはごくわずかしかない。韓国側からすると日本側の考え方を日本のメディアから知る機会も非常に限られているということになる。


 結果的に自分の視点で相手を「知ったつもり」なっているだけなのだ。どちらが正しいかという判断はとりあえず置いておいて、相手のことを「知る」ことが大切である。という話をした上で、日本側の立場で日韓基本条約の話(植民地時代をどう考えるかを中心に)を行った。


 そして、訪日高校生に対して希望することは、せっかく日本に来てホームステイをするのだから、滞在中に友だちを作ってほしい。そして、自分の文化について、相手に分かるように具体的に説明できるスキルを身につけることである。


 例えば韓国のテンジャンは素晴らしいという話を聞いたことがあるが、いくら説明を聞いていても日本の味噌との違いがまったく分からなかったということがあった。同じ話は陶磁器の素晴らしさの話でも感じた。日本の陶磁器とどう違うか説明できないのだ。


 相手の立場を知ること、相手に分かるように自分たちのことを説明できること。文化の理解のみならず、互いの交流にとって大事な要素であるように思う。


 

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