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  • 執筆者の写真JAKEHS EAST

日韓交流学習のきっかけ

(記事執筆= 澤邉裕子/ 宮城学院女子大学)


2005年より、韓国の高校生と日本の高校生をつなぐ日韓交流学習を行っている。2011年にはそれまでの事例を整理し、日韓併記での日韓交流学習事例集というWEBサイトを構築した。交流学習に関心をお持ちの先生で、でもやり方がよくわからないという方に参考にしていただければという思いで作ったものだ。おかげさまで毎年、国際文化フォーラムの日韓校長・教師交流会で紹介していただいている。それがきっかけでサイトを知った韓国の先生から、先日も問い合わせがきたばかり。交流学習に熱意のある先生との出会いはいつも嬉しいものである。


今日は日韓交流学習について考えていることについて書きたいと思う。


まずは、日韓交流学習を授業で始めたきっかけから。私は日本の中学校で英語教育に従事した後、国際交流基金の派遣で韓国に渡り、約5年間韓国で日本語教育に携わった経験がある。その主な教育現場は高校と中学校だった。国際交流基金の日本語教育機関調査の結果によると、この当時、韓国の初等・中等教育機関で学ぶ日本語学習者数は約78万人で、世界一多かった。韓国の高校では第二外国語の必修選択科目として日本語が教えられ、2001年には中学校での日本語教育が選択科目として開始され、中高生の学習者数が非常に多かったのである。当然、韓国人の日本語教師の数も多い。しかしながら、ネイティヴ教師が学校教育の現場で教えるということは一部の自治体を除き制度としてなかったため、ネイティヴを導入した日本語の授業というものはほとんどの現場で行われていなかった。このような状況の中で、外国語高校以外の一般の高校や中学校においてネイティヴ教師が継続的に、韓国人教師とともに授業を行うことの意義や課題はどのような点にあるかを探るために、私は2002年から2005年の3年間にわたり韓国内の高校と中学校に通い、韓国人教師とともにティーム・ティーチング授業を行うことになった。生徒たちの中には日本に対して複雑な感情を持つ生徒も多いが、日本語を学ぶことにより日本や日本人に対する理解が促され、マスコミや教育、大人から与えられる否定的な日本や日本人イメージを学習経験によって変容させていく姿も多く見てきた。それは中等教育段階において英語以外の外国語、特に隣国の言語と文化を教えることの意味を、実感を持って捉えた経験だった。


私が韓国にいた時期は日本語ブームの時期であり、学習者の数も増加の一方で、書店にも日本語の本が溢れていた。日本でも韓流ブームが湧き上がるちょうどその時期にあったが、2000年代前半まで、まだまだ韓国語はマイナーな外国語だった。韓国の高校では第二外国語が必修選択であり、そのために韓国では日本語学習者が多かったのだが、外国語として英語だけでなく他の外国語も学ぶことが重視されている韓国との違いを強く感じるようになっていた。韓国のさまざまな学校の教室を何十クラスも訪問し、何百という生徒たちが日本語を学んでいる風景を見てきた私は、自然と日本の外国語教育の現状と韓国の教育を比較するようになった。


このような経験がきっかけとなり、私は韓国で日本語を学んでいる中高生の存在を日本の高校生に知ってもらい、互いに学び合うような教育実践ができないかと考えるようになった。2007年に日本に帰国してからは日本語教員養成の仕事に携わりながら、高校生向けに日韓交流学習の講座を開講し、韓国語を学ぶ場を作っている。勤務している大学には同じ敷地内にある高校との間に高大連携プログラムという制度があり、大学教員が高校生を対象とした授業を提供することができる。連携している高校には英語以外の外国語の授業がなかったため、私は身近にいる高校生たちに韓国で日本語を学んでいる高校生たちとの接点を作り、韓国の高校生との交流活動の中に韓国語の学習が自然に入るような授業をしたいと考えた。それと同時に高等学校韓国朝鮮語教育ネットワークに入会し、韓国語教員研修にも参加して多くの韓国語の先生方と知り合い、学校を訪れて高校生間の日韓交流の現場を参与観察したり、授業について語り合ったりするようになった。


日韓交流学習は、言語学習動機の向上、文化理解、人間関係の構築など生徒にもたらすさまざまなメリットがあるが、教師だけでなく日韓の教師がつながり、互いに学び合えるという点も重要であると考えている。どうしたら相手の高校の生徒さんが喜んでくれるかな?と必死になって考える。想いを込めて韓国語や日本語を使い、生徒とともにメッセージを届ける。その結果がどうだったか、フィードバックをもらい、授業のコースを振り返る。その一連の作業が、日本と韓国の教師どちらにとって良い教師トレーニングにもなっているように思う。


2018年2月には東京とソウルの会場をつないで、初めての日韓合同交流学習研修を実施した。その結果、日韓合わせて40名以上の教師たちがつながりをもち、交流学習実践コミュニティ(Facebookページ)を形成するに至っている。生徒たちの学びを深める新しい日韓交流学習の形をデザインしていくことを目標に、来年度も先生方と知恵を出し合っていきたいと思っている。


■参考URL:

「隣国のことばと文化を学ぼう~日韓交流学習事例集」WEBサイト

http://www.jk-exchange.com/

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